こんにちは、院長の宮脇大です。

先日、こんな相談を受けました。

「先生、父が先月、心筋梗塞で入院したんです。でも父って、健診でもいつもコレステロールも血圧も正常範囲で・・。なんで急に、って感じで」

これ、とても大事なご質問なんです。

実は心筋梗塞の方の中に、「従来のリスク因子では説明がつかない」ケースがあります。

その背景のひとつとして注目されているのが、染色体9番短腕の「9p21領域」にある遺伝子多型です。


ゲノム研究が見つけた”最も強い”心臓リスク遺伝子

ゲノムワイド関連解析(GWAS)というのは、ざっくり言うと、

「病気になる人となりにくい人で、DNAのどこが違うか?」を丸ごと調べる

という大規模な遺伝子研究です。

この研究を通じて、世界中の研究者が繰り返し確認してきたのが、染色体9番の「9p21領域」にある遺伝子多型と、冠動脈疾患・心筋梗塞との強い関連です。

この領域は、心血管疾患のGWAS研究の中で最も再現性が高く、最も強い関連を示す領域のひとつとして知られています。


日本人でも「同じリスク」が確認されている

「欧米人の話でしょ?」と思った方、安心してください(いや、安心できないのですが)。

日本人・韓国人のコホート研究でも、9p21領域の変異と冠動脈疾患との関連が明確に確認されています。

日本人を対象とした研究では、

  • リスクアレルを持つ人は、冠動脈疾患のリスクが約1.3〜1.5倍

という結果が報告されています。

「1.3倍か・・そんなに大きくないな」と思った方。

実はここが重要なポイントで、この数字は

「喫煙・高血圧・高コレステロールなどの影響をすべて取り除いたうえで」の1.3〜1.5倍

なんです。


コレステロールとは「別の経路」でリスクを上げる

9p21領域には、CDKN2A(p16)CDKN2B(p15) という遺伝子があります。

これらは細胞の老化と増殖をコントロールする遺伝子です。

さらに、近くには ANRIL(アンリル) という非コードRNA(タンパク質をつくらないRNA)が存在していて、

このANRILが血管の壁を構成する細胞(平滑筋細胞)の老化・アポトーシス(細胞死)に影響を与えることで、動脈硬化が起きやすい状態をつくると考えられています。

ざっくり言うと、

コレステロールや血圧が高い → 血管が傷む

という「外からの攻撃」とは別に、

9p21変異 → 血管の壁自体が老化しやすい

という「内側からの弱さ」があるイメージです。

だから、コレステロールが正常でも、血圧が正常でも、リスクが上がりえる。


リスクアレルを持っていても、「食習慣で修飾できる」

ここ、とても大事なところです。

カナダの大規模研究(INTERHEART研究)では、こんな興味深いデータが出ています。

9p21リスクアレルを持つ人でも、「野菜・果物・食物繊維が豊富な食事」をしている人はリスクが低かった。

つまり、遺伝的なリスクが食習慣によって「和らげられる」ことが示されているんです。

逆に言えば、リスクアレルを持っているのに食生活に無頓着だと、そのリスクがより表れやすい可能性があるということでもあります。

遺伝子は「決定」ではなく「傾向」です。でも、「傾向」を知れば「対策」ができる。


9p21リスクが高い人に特に気をつけてほしいこと

では、具体的にどんな予防が効果的でしょうか?

食事面

  • 野菜・果物・豆類・全粒穀物を中心とした食事
  • 魚(特に青魚)を週に数回
  • 加工食品・精製炭水化物・砂糖の控えめ
  • 地中海食に近いパターンが参考になります

運動面

  • 有酸素運動(ウォーキング・水泳など)を週150分以上
  • 血管の柔軟性を保つという意味でも運動は効果的です

その他のリスク管理

  • 禁煙(喫煙は9p21リスクと相乗的に動脈硬化を促進します)
  • 質の良い睡眠(睡眠と遺伝子の関係もぜひ読んでみてください)
  • 定期的な血管年齢・動脈硬化度のチェック

「血圧もコレステロールも正常」だからこそ、遺伝子を見る意味がある

MTHFR遺伝子とホモシステインの記事でもお伝えしたように、循環器リスクは「健診の数値」だけでは語れません。

健診で正常でも、遺伝的に動脈硬化が起きやすい体質かどうかは、ゲノム情報を見ないとわからないんです。

9p21多型は、そういった「見えないリスク」を可視化するひとつのカギです。


こんな方は、ぜひゲノム検査を考えてみてください

  • ご両親や兄弟に、若くして心筋梗塞・脳梗塞になった方がいる
  • 健診では「異常なし」なのに、なんとなく心臓が心配
  • 食事・運動に気をつけているのに、動脈硬化の進行が気になる
  • 家族性高コレステロール血症を指摘されたことがある

「自分はどのタイプなんだろう?」という疑問、ゲノム情報で少し整理できるかもしれません。


塩分感受性と高血圧の遺伝子とあわせて、血管まわりの体質を総合的に見ることで、あなたに合った予防医療が見えてきます。

「気になる方はLINEでお気軽にご相談くださいね。

それでは、また!

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