こんにちは、院長の宮脇大です。
先日、外来でこんなご質問を受けました。
「先生、健診ではコレステロールも血圧も正常なのに、父も祖父も心筋梗塞をやってるんです・・私も同じ道をたどるんでしょうか??」
これ、本当によく聞かれます。
そして、こういう「家系で心臓が弱い」という方には、ぜひ一度知っておいてほしい数値があります。
それが、今日お話しする リポタンパク(a)(リポプロテイン・エー、Lp(a))です。
「Lp(a)って、何ですか?」
簡単に言うと、Lp(a)は 「悪玉コレステロール(LDL)に、おまけのタンパク質がくっついた粒子」 です。
LDLコレステロールは、みなさんもなんとなくご存知ですよね。「血管を詰まらせる、あいつ」というイメージかなと思います。
Lp(a)はそのLDLに、apo(a)(アポエー) という特殊なタンパク質がくっついた粒子のこと。
このapo(a)がやっかいで、
- 血管の壁にくっつきやすい
- 血栓(血のかたまり)を作りやすい
- 血管の炎症を起こしやすい
という、ちょっと困った性質を持っているんです。
つまり、LDLが「悪玉」だとしたら、Lp(a)は「悪玉のさらに上の、隠れボス」みたいな存在なんですね。
なぜ「遺伝が9割」なのか
Lp(a)の最大の特徴は、その血中濃度が ほぼ遺伝(80〜90%)で決まる ということです。
これは、第6染色体の LPA遺伝子 という遺伝子が、apo(a)というタンパク質の「設計図」になっているからなんです。
LPA遺伝子の中には「KIV-2(クリングル4タイプ2)リピート」という、同じ配列の繰り返しがあるのですが・・
このリピートの数が人によって違う。
- リピートが少ない人 → 血中Lp(a)が高い
- リピートが多い人 → 血中Lp(a)が低い
つまり、生まれたときから「Lp(a)が高めの人」「低めの人」が決まっているわけです。
そして、ここが大事なんですが・・
食事や運動、ダイエットでは、Lp(a)はほとんど下がらない。
LDLコレステロールなら、食事や運動でかなり改善できますよね。 でもLp(a)は、そういう「努力」がほとんど効かない。
ある意味、「生まれつきのコレステロール体質」なんです。
健診では普通、測ってもらえません
ここがまた重要なポイントなんですが、Lp(a)は 通常の健康診断や人間ドックの脂質パネルには含まれていない ことがほとんどです。
健診で測るのは、
- 総コレステロール
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 中性脂肪(トリグリセライド)
このあたりまで。Lp(a)はオプション扱いか、そもそも項目にないことが多いんです。
だから、
「健診はずっと異常なし、家族には心筋梗塞の人がいる、でも自分も大丈夫」
と思っている方の中に、実は Lp(a)が高くて動脈硬化リスクが隠れている方 がいらっしゃる可能性があるんですね。
どんな人がLp(a)を測ったほうがいい?
日本動脈硬化学会の最近のガイドラインや、国際的なコンセンサスでは、こんな方にLp(a)測定が推奨されています。
- 50代以前の若いうちに心筋梗塞や脳梗塞を起こした血縁者がいる
- ご自身が家族性高コレステロール血症を指摘されたことがある
- LDLコレステロールをしっかり下げているのに、動脈硬化が進むと言われた
- 大動脈弁狭窄症を指摘されたことがある(Lp(a)は弁の石灰化にも関わります)
- 「家系で心臓が弱い」という自覚がある
ここに当てはまる方は、一度Lp(a)を調べてみる価値が十分にあります。
「一生に一度測れば十分」という、ちょっと特殊な検査
これ、面白いところなんですが・・
Lp(a)は遺伝で決まるので、基本的に一生変わりません。
つまり、
20歳で測っても、50歳で測っても、ほぼ同じ値が出る。
だから、健診で毎年測る必要はなくて、「一生に一度、自分のLp(a)を知っておく」 という使い方が国際的にも推奨されているんです。
これって、ゲノム検査の考え方とすごく似ていますよね。
「生まれつきの体質」を、一度しっかり把握して、それを人生の予防戦略に活かしていく・・という発想です。
Lp(a)が高かったら、どうすればいいの?
「じゃあ、Lp(a)が高いってわかっても、下げられないなら意味ないじゃん」
と思われるかもしれません。
でも、実はそんなことはなくて、Lp(a)が高い方には 「ほかのリスク因子をより厳しく管理する」 という戦略が有効です。
具体的には、
①LDLコレステロールをしっかり下げる
Lp(a)自体は下げられなくても、LDLが下がれば動脈硬化全体の進行を緩やかにすることが期待できます。Lp(a)高値の方ほど、LDL目標値を厳しめに設定する流れになっています。
②血圧・血糖・喫煙のコントロール
Lp(a)が高い × 喫煙 × 高血圧、のように リスクが重なると相乗的に動脈硬化が進む ことが知られています。だからこそ、他の修正可能なリスクは徹底的に減らす。
③食事・運動・睡眠の質を上げる
9p21遺伝子の記事でもお伝えしたように、地中海食パターンや運動習慣は、遺伝的な動脈硬化リスクを和らげる方向に働きます。
④定期的な血管の評価
頸動脈エコーや冠動脈CTで、実際に動脈硬化がどれくらい進んでいるかを見ていく。数値だけでなく、「血管の今の状態」を知っておくことが大事です。
Lp(a)を下げる新しいお薬も登場してきています
ここ数年、Lp(a)そのものを下げる新しい治療薬の開発が進んでいます。
- PCSK9阻害薬:LDLを下げるお薬ですが、Lp(a)も2〜3割ほど下げる効果が報告されています
- アンチセンスオリゴ製剤・siRNA製剤:Lp(a)を作る経路そのものをブロックする新規薬剤(現在、国際的な臨床試験が進行中)
これからの数年で、「Lp(a)が高い人専用の治療戦略」がもっと整ってくる時代になってきそうです。
そういう意味でも、自分のLp(a)値を知っておくことは、将来の選択肢を広げるという観点でとても大事だなと思います。
「ゲノム × Lp(a)」で見える、本当の循環器リスク
ゲノムでYOBO相談では、GreenChord遺伝学的検査でLPA関連の遺伝的傾向や、ほかの循環器リスク遺伝子(9p21、家族性高コレステロール血症の関連遺伝子、塩分感受性など)を総合的に見ていきます。
そして、必要であればLp(a)の血液検査もあわせて行い、
- 遺伝的にどんな動脈硬化リスクを持っているか
- 健診の数値とどう組み合わせて読み解くか
- どのリスクから優先的に対策すべきか
を、医師と30分かけてじっくりお話します。
家族性高コレステロール血症の記事とあわせて読んでいただくと、「コレステロールの遺伝的な側面」が立体的に見えてくるはずです。
まとめ
- Lp(a)は、ほぼ遺伝で決まる「生まれつきの動脈硬化リスク」
- 食事・運動・体重ではほとんど下がらない
- 健診ではあまり測られないので、自分から測りに行く必要がある
- 一生に一度測れば十分
- 値が高くても、ほかのリスクを徹底管理することで動脈硬化の進行を遅らせられる
- 新しい治療薬も登場してきている
「家系で心臓が弱いんです・・」というご相談、本当に多いです。
そして、そういう方こそ、Lp(a)とゲノム情報の組み合わせで 「見えていなかったリスク」が見えてくる ことがあります。
気になる方は、LINEからお気軽にご相談くださいね。
それでは、また!