こんにちは、院長の宮脇大です。
「先生、私って本当に朝が弱くて・・どうにかなりますか??」
先日、30代の患者さんからこんな相談を受けました。
「毎朝アラームを5個かけているのに、起きるたびに止めてしまって。 夜は12時過ぎても全然眠くならないんです・・」
わかります。わかりますよ、その感覚。
でも、それって「怠け者」なんじゃなくて、遺伝子のクセかもしれないんです。
今日は「睡眠と遺伝子」の話をしていきますね。
「朝型・夜型」はなぜ人によって違う?
人間の体には「体内時計」というものが備わっています。
大げさな話ではなくて、ほぼすべての細胞に「時間を計るしくみ」が 組み込まれているんです。
この体内時計を調節しているのが、「時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子たちです。
その中でも特に研究が進んでいるのが、CLOCK遺伝子とPER3遺伝子。
今日はこの2つを中心にお話しします。
CLOCK遺伝子:夜更かし体質をつくる?
CLOCK遺伝子は、体内時計の「リズムの長さ」を調節する遺伝子です。
この遺伝子に rs1801260(3111T/C) というSNP(一塩基多型)があります。
CC型を持つ人は夜更かし傾向が強い・・という研究があるんです。
秋田大学の研究では、日本人421人を調べた結果、 このCC型を持つ人は有意に夜型の傾向が強かったと報告されています。
さらに、CC型の人は1日あたりの睡眠時間が10〜15分短い傾向があるとも。
「たった10〜15分でしょ?」と思うかもしれませんが、 年間にすると60〜90時間の積み重ねになります。
・・これ、けっこう大きいですよね。
PER3遺伝子:「朝型か夜型か」に直結する遺伝子
もう一つ、PER3遺伝子という遺伝子があります。
PER3遺伝子には長さの違う2つのバリアントがあって、
- 長いバリアント(5リピート型):朝型傾向
- 短いバリアント(4リピート型):夜型傾向
・・と報告されています。
特に4リピート/4リピート型の人は、「睡眠相後退症候群」のリスクが やや高いとされています。
「睡眠相後退症候群」というのは、眠れる時間帯がずれてしまう状態のことです。 「夜2時まで眠れないけど、昼間に眠くて仕方ない」という状態がずっと続く感じ。
これが「怠惰」や「気合いが足りない」じゃなくて、体内時計の問題だとしたら・・ 少し気持ちが楽になりませんか?
「遺伝率50%」ってどういうこと?
ここで一つ大事な数字を紹介します。
クロノタイプ(朝型・夜型の傾向)の**遺伝率は約50%**と推定されています。
一卵性双生児と二卵性双生児を比較した研究で、 一卵性の方がクロノタイプの一致率が明らかに高い、という結果が出ています。
50%・・ということは、残りの50%は環境や生活習慣で変えられるということです。
「遺伝だから仕方ない」と全部あきらめるんじゃなくて、 「土台は遺伝子で決まっているけど、日常の工夫で調整できる」と考えると、 取り組み方が変わってきますよね。
ちなみに、大規模GWAS研究(約70万人対象)では、クロノタイプに関わる遺伝子座が 351か所も見つかっています。
朝型・夜型って、ほんとうに複雑な遺伝的背景があるんです。
夜型の体質は、健康リスクにも影響する?
ここが予防医療として大事なポイントです。
複数の大規模研究で、夜型の傾向が強いほど、
- 2型糖尿病との関連が報告されている
- 心血管疾患のリスクが高い傾向がある
- うつ病・不安障害との関連も指摘されている
・・という結果が出ています。
「夜型だから病気になる」というシンプルな話ではありません。
夜型の生活リズムが、食事の時間帯や運動量、睡眠の質に影響して、 間接的に生活習慣病のリスクを押し上げる可能性があります。
運動の効果も遺伝子によって違いがあることと合わせると、 「自分の体質に合った生活習慣」を知ることがいかに大事か、実感していただけると思います。
「夜型遺伝子」があっても、できることはある
では、遺伝的に夜型の方はどうすればいいか?
いくつかヒントをお伝えします。
朝に光を浴びる
起きたらすぐカーテンを開けて、自然光を浴びる。 これが体内時計をリセットするいちばん強いスイッチです。
就寝・起床時刻を固定する
「週末だから2時間多く寝る」をやめると、体内時計がズレにくくなります。 「社会的時差ぼけ」を防ぐ一番のコツです。
夕方以降の強い光を避ける
スマホのブルーライトが、眠気ホルモン(メラトニン)の分泌を抑えます。 夜9時以降は画面を暗めにする習慣が助けになります。
これらは遺伝型に関わらず有効ですが、 特に夜型の遺伝的背景を持つ方には、意識して続ける価値が高い習慣です。
まとめ
「朝型・夜型」には、確かに遺伝的な背景があります。
CLOCK遺伝子・PER3遺伝子などの多型が、体内時計のリズムに影響しています。 遺伝率は約50%。でも残りの50%は、生活習慣で変えられます。
「なぜ自分はこんなに朝が苦手なんだろう?」と長年悩んでいた方は、 まず体質として受け入れながら、できる工夫を一つずつ試してみてください。
Doctor’s Fitness 診療所の「ゲノムでYOBO相談」では、 睡眠のリズムに関わる遺伝的体質も含めて、医師が一緒に予防プランを考えていきます。
「最近、睡眠の質が落ちている気がする」 「夜型で悩んでいる」という方は、LINEからお気軽にご相談くださいね。
塩分感受性と遺伝子の話もあわせてどうぞ。
次回は、「ビタミンDと遺伝子」の話をしようと思います。 骨の健康や免疫との関係を、遺伝的体質から読み解いていきますね。
それでは、また!