こんにちは、院長の宮脇大です。
先日、50代の男性患者さんからこんな相談を受けました。
「先生、健診でずっと尿酸値が高め、って言われていて・・。 でもお酒はそんなに飲まないし、肉も控えているんですよ?? なんで下がらないんですかね?」
この「気をつけているのに」という悩みを持つ方は、意外と多いんです。
その原因のひとつが、ABCG2遺伝子にある可能性があります。
尿酸って、そもそも何ですか?
まず「尿酸」を簡単におさらいしますね。
尿酸は、体内でDNAや食べ物から「プリン体」が分解されるときに生まれる物質です。
健康な状態なら、腎臓や腸が尿酸をしっかり排泄してくれるので、血液中の濃度は一定に保たれます。
ところが、排泄がうまくいかなくなると、血液中に尿酸がじわじわたまっていきます。
これが続くのが高尿酸血症で、さらに悪化すると尿酸塩の結晶が関節に沈着して、あの有名な激痛——痛風(つうふう)を引き起こします。
足の親指のつけ根が急に腫れて、歩けないほど痛くなる、あれですね。
ABCG2遺伝子って、なんですか?
ここで登場するのが、ABCG2(エービーシージーツー)という遺伝子です。
難しい名前ですが、役割はシンプル。
「小腸から尿酸を体の外に排泄する”出口”をつくっている遺伝子」
腎臓が尿として尿酸を捨てるのは有名ですが、実は小腸からも尿酸の約3割が排泄されています。
そのゲートとして働くのが、ABCG2トランスポーターなんです。
Q141K多型 — 日本人の約4割が持っている変異
このABCG2遺伝子に Q141K多型(Q141K) という変異があると、この「尿酸の出口」の機能が著しく落ちてしまいます。
日本人での分布はおおよそ、
- GG型(変異なし):約55〜60%
- GT型(変異1コピー):約30〜35%
- TT型(変異2コピー):約10〜15%
つまり、日本人の約40〜45%が何らかのQ141K多型を持っているんです。
欧米人ではこの変異を持つ割合が約10%程度なのに対して、東アジア人(日本人・中国人・韓国人)では圧倒的に多い。
これは「珍しい変異」ではなく、日本人の体質のバリエーションのひとつと言えます。
実は、遺伝子の影響は「肥満」や「飲酒」よりも大きかった
高尿酸血症の原因としてよく聞くのは「プリン体の摂り過ぎ」「飲酒」「肥満」ですよね。
でも、日本人を対象にした大規模な研究で、高尿酸血症への影響度(寄与リスク)を比べると、こんな結果が出ています。
- ABCG2遺伝子多型:約29%
- 肥満:約19%
- 多量飲酒:約15%
遺伝的な尿酸排泄の問題が、肥満や飲酒よりも影響が大きいんです。
「節制しているのになぜ下がらないのか」という疑問が、これで少し解けてくるんじゃないでしょうか。
TT型だと、具体的にどんな影響がある?
TT型の方は、
- 腸からの尿酸排泄量が大きく低下(正常の25〜30%程度まで落ちることも)
- 血中尿酸値が高くなりやすい
- 食事・飲酒の改善だけでは尿酸値が思うように下がりにくい
- 痛風発作を起こすリスクが高まる
という傾向があります。
「若いころから尿酸値が高め」という方や、「健診の数値がずっと基準値ギリギリ」という方は、TT型やGT型の方が多いのかもしれません。
でも、「知っていれば対策できる」んです
TT型・GT型の方でも、ライフスタイルの工夫で尿酸値をコントロールできます。
特に意識してほしいこと:
水分をたっぷり摂る 1日2L目標。腎臓からの尿酸排泄を助けてくれます。
ビールは特に注意 ビールはプリン体が多いうえ、アルコール自体が尿酸の排泄を妨げます。「プリン体ゼロビール」でも、アルコールの問題は残ります。
果糖(フルクトース)を控える 清涼飲料水や果糖ぶどう糖液糖の入った飲み物は、尿酸の産生を増やします。ジュースの飲み過ぎには要注意。
プリン体の多い食品を減らす レバー・白子・干物・一部の魚介類は少なめに。
適度な有酸素運動 肥満を防ぎ、尿酸の代謝を改善します。ただし激しい無酸素運動は逆効果になることもあるので加減が大事。
こんな方は、ABCG2遺伝子を確認してみる価値があります
- 健診で尿酸値が基準値上限あたりをずっとウロウロしている
- 食事・飲酒を意識しているのになかなか改善しない
- ご家族に痛風・高尿酸血症の方がいる
- 20〜30代で尿酸値が高めと言われた(若いうちからの高尿酸血症は遺伝的関与が大きいことも)
「体質を知ること」が、予防の近道
遺伝子と生活習慣病の関係の記事でもお伝えしたように、遺伝的リスクは「決定」ではなく「傾向」です。
ABCG2遺伝子のTT型でも、GT型でも、ライフスタイルと必要に応じた投薬など、医師のサポートで、尿酸値を適切にコントロールすることは十分に期待できます。
「自分がなぜ尿酸値が高いのか、遺伝的な体質から調べてみたい」という方は、ぜひご相談ください。
また、MTHFR遺伝子とホモシステインの話でも触れたように、血管リスクに関わる遺伝的な体質は複数あります。高尿酸血症も動脈硬化のリスクと関連することが知られていますので、「血管の健康を総合的に守る」という視点で、一緒に考えていきましょう。
Doctor’s Fitness 診療所の「ゲノムでYOBO相談」では、GreenChord遺伝学的検査をもとに、尿酸代謝や循環器リスクを含めた体質を医師と一緒に整理することができます。
「健診の数値が気になっているけど、どこに相談すればいいかわからない」という方も、まずはLINEでお気軽にどうぞ。
それでは、また!