こんにちは、院長の宮脇大です。
「遺伝子のリスクを調べる」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
「特定の遺伝子に変異があるかどうかを調べる」というイメージを持たれる方が多いと思います。
それ、半分は正しいんです。
でも、糖尿病や心疾患・高血圧といった「よくある生活習慣病」については、もう少し仕組みが複雑です。
今日は「PRS(ポリジェニックリスクスコア)」という、遺伝的リスクの新しい見方についてお話ししてみますね。
「一つの遺伝子」で決まる病気と、「たくさんの遺伝子」が関わる病気
まず、遺伝性疾患には大きく2種類あります。
単一遺伝子疾患は、特定の一つの遺伝子の変異が直接引き起こすタイプです。家族性高コレステロール血症(FH)や、BRCA遺伝子に関連したがんリスクがその代表です。「一つの遺伝子に変異があるかないか」が大きな意味を持ちます。
一方、多因子疾患(2型糖尿病、心疾患、高血圧など)は、数十から数百の遺伝的なバリアントが少しずつリスクに関わっています。
「バリアント」というのは、「ごく小さな遺伝子の個人差」のようなものです。一つ一つの影響はとても微小ですが、それが積み重なると、全体として病気のなりやすさに差が出てくる——そういう仕組みです。
PRSとは、「リスクの合計点」のこと
**PRS(Polygenic Risk Score:ポリジェニックリスクスコア)**は、こうした「多数の小さな遺伝的バリアント」を合算して、リスクを一つのスコアで表す方法です。
分かりやすく例えると——
「大規模な集団研究で、ある病気のリスクと関連することが分かった遺伝的バリアントを選び、それぞれに重みをつけて合計したもの」
それがPRSです。
テストで言えば、「各科目の小テストの合計点」に近いイメージです。一科目だけでは全体の実力は分からない。でも全科目の合計を見ると、「この人は総合的にリスクが高め」「この人は平均的」という違いが見えてくる。
具体例:心疾患のPRS研究
心疾患(冠動脈疾患)のPRSに関しては、大規模な研究が行われています。
報告によると、PRSが高いグループ(集団の上位20%程度)の人は、低いグループ(下位20%)と比べて、冠動脈疾患の発症リスクが約3〜4倍になると言われています。
重要なのは、この差が「コレステロールが高い」「血圧が高い」「喫煙している」といった従来のリスク因子だけでは説明しきれない部分を補っているという点です。つまり、PRSは既存の検査とうまく組み合わせることで、よりリスクを精度高く評価できる可能性があるんですね。
PRSが「万能」というわけではない
ただし、正直にお伝えしたいこともあります。
一つ目は、現状の研究ベースが欧米人中心であるという点。PRSの精度は、元となるゲノムデータの集団特性に左右されます。欧米人データで構築されたPRSを、そのまま日本人に適用すると精度が落ちることが知られています。日本人向けに最適化された検査・研究が必要です。
二つ目は、PRSが高くても「必ず発症する」わけではないという点。環境因子(食事・運動・睡眠)によって発症リスクは大きく変わります。PRSはあくまで「注意信号」であり、「宿命」ではありません。
だからこそ、PRSの結果を読み解いて「その人に合った予防策」を一緒に考えていく医師の関わりが大切になります。
GreenChordと、日本人向けのPRS
Doctor’s Fitness 診療所でお取り扱いしているゲノム検査(GreenChord)は、日本人のゲノムデータに基づいてPRSを算出しています。
「自分の遺伝的なリスクプロフィール」を把握した上で、医師と一緒に予防計画を立てていく——それが「ゲノムでYOBO相談」の根幹にあるものです。
なぜ予防医療にゲノムを取り入れたのか(後編)でも触れましたが、「層別化」という考え方がゲノム医療の本質にあります。PRSは、その層別化を実現するための強力な道具の一つです。
「自分のPRSが気になる」「遺伝的なリスクの話を詳しく聞きたい」という方は、まずはLINEでお気軽にご相談ください。
それでは、また!