こんにちは、院長の宮脇大です。
先日、こんな相談を受けました。
「父が50代で大腸がんになって、祖父も大腸がんで亡くなっているんです。 私も同じになりますか・・??」
・・これ、すごく重要な質問なんです。
実は、大腸がんの中には「遺伝的に発症しやすい体質」があることが分かっています。 その代表格が、リンチ症候群(Lynch症候群) と呼ばれるものです。
今日は、この「遺伝性の大腸がん体質」について、できるだけ分かりやすくお話しします。
リンチ症候群ってなに?
リンチ症候群とは、DNA修復遺伝子に変異があることで、大腸がんをはじめとするいくつかのがんが起きやすくなる体質のことです。
遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)という名前で呼ばれることもありますが、最近はリンチ症候群という言葉が一般的になっています。
ちょっと難しく聞こえますよね。
簡単に言うと・・
私たちの体には、DNAのコピーミスを見つけて直す「校閲担当」の遺伝子があります。 そこに変異があると、ミスが蓄積されてがんが起きやすくなる——それがリンチ症候群です。
関係する遺伝子は4つ
リンチ症候群の原因になる主な遺伝子は以下の4つです。
- MLH1
- MSH2
- MSH6
- PMS2
この4つはどれも「ミスマッチ修復(MMR)遺伝子」と呼ばれるグループで、 DNA複製時に起きるエラーを修正する役割を担っています。
どの遺伝子に変異があるかで、がんリスクの大きさや種類が少し変わってきます。
なかでもMLH1とMSH2の変異が全体の9割以上を占めるとされています。
どのくらいリスクが上がるの?
これが、リンチ症候群の本当に大事なポイントです。
70歳までの累積リスクで見ると(遺伝子の種類によって幅がありますが):
大腸がんの発症リスクは、MLH1変異で約44%、MSH2変異で約53%にのぼるという報告があります。
日本人の大腸がんの生涯リスクはおよそ6〜7%とされていますので、 リンチ症候群の方は一般の方と比べて5〜8倍以上のリスクになる計算です。
さらに、大腸がんだけでなく:
- 子宮体がん(特に女性):35〜46%
- 胃がん:2〜16%
- 卵巣がん:3〜17%
- 尿管・腎臓のがんなども
といった、複数のがんリスクが高まります。
そしてもうひとつ重要なのが、発症年齢が若いこと。
一般的な大腸がんは70代での発症が多いのですが、リンチ症候群では 発症年齢の中央値が40代前後というデータがあります。
つまり、「健康診断は50歳から」と思っていると、手遅れになる可能性があるんですね。
「家族に大腸がんが多い」は要注意サイン
リンチ症候群は常染色体優性遺伝といって、親から子へ50%の確率で受け継がれます。
ですから、次のような家族歴がある方は、注意が必要です:
- 大腸がん・子宮体がんに若い年齢(50歳未満)でなった家族がいる
- 複数の世代(祖父母・親・きょうだいなど)に大腸がんがある
- 同じ家族に複数種類のがんがある(大腸がん+子宮体がんなど)
もちろん、家族歴があるからといって必ずリンチ症候群というわけではありませんが、 上記に当てはまる方は一度ご相談いただくことをおすすめします。
分かったら怖いんじゃないの?
・・こう思う方、多いと思います。
でも正直に言わせてください。
「知らないまま」のほうが、ずっと怖いのです。
リンチ症候群と分かれば、その後の管理方法が変わります。 具体的には:
大腸内視鏡検査を20〜25歳から1〜2年おきに実施する
これだけで、進行がんを大幅に減らすことができるとされています。
早期発見・早期治療につながるわけです。
女性の場合は子宮体がんのスクリーニングも加わります。
逆に言うと、「知らないまま40代に大腸がんが見つかって、ステージIVだった」 という展開が、検査ひとつで変えられる可能性があるんです。
リンチ症候群かどうかはどう調べるの?
診断の流れはだいたいこうです:
- 家族歴や既往歴の確認
- がん組織を使ったMSI検査(マイクロサテライト不安定性検査)
- 血液による遺伝子検査でMLH1/MSH2などの変異を確認
Green Chordではここまでの検査はできませんが、家族歴や既往歴を知ることで、自分が次にとる行動は変わってくると考えます。ぜひ、ご相談ください。
BRCAとの違いは?
先日の記事でBRCA遺伝子についてお話ししましたが、 リンチ症候群とBRCAの違いを簡単にまとめると:
- BRCA:主に乳がん・卵巣がん(女性に特に重要)
- リンチ症候群:主に大腸がん・子宮体がん(男女ともに重要)
どちらも「遺伝性がん体質」という点は共通していますが、 関係するがんの種類が違います。
「自分の家族にどんながんが多いか」で、どちらの検査が有用かが変わってきます。
まとめ
リンチ症候群は、決して珍しい話ではありません。
日本人全体での頻度は440人に1人程度という報告もあり、 特に大腸がんや子宮体がんの家族歴がある方には、知っておいてほしい情報です。
遺伝子を調べることで「リスクが分かる → 早めに対策できる」という流れをつくる。 それが、私がゲノムを利用した予防医療を行っている理由の一つです。
「うちの家系、がん多いんですよね」と思っていた方——ぜひ一度ご相談ください。
それでは、また!
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